本ページでは仕入れた商品の代金を、現金で支払うまでの日数を測定する財務指標仕入債務回転期間についてわかりやすく解説します。
計算式や目安となる数字など、企業分析者なら絶対に理解しておきたい仕入債務回転期間のポイントをまとめてお届け!
仕入債務回転期間とは?意味と計算式を解説
仕入債務回転期間 (日) |
|
---|---|
指標分類 | 効率性 |
意味 | 商品の材料等を仕入れた後、 仕入れ先に代金を支払う までの期間を測定する指標。 交渉力が強い企業ほど この期間が長くなる。 |
計算式 | 仕入債務回転期間=仕入債務÷(売上原価÷365) |
目安 | 65.3日(長い方が好ましい) |
改善方法 | 仕入債務を増やす 売上原価を減らす |
算出に 必要な 財務諸表 |
BS:仕入債務(買掛金+支払手形) |
PL:売上原価 | |
CF:必要なし | |
英語名 | Receivable Turnover Period |
仕入債務回転期間とは、仕入時に発生した未払金を何日後に決済しているかを測定する財務指標。
仕入債務を1日あたりの売上原価で割ることにより計算できます。また、回転期間を月数で知りたい場合は売上原価を365ではなく12で割ることで算出可能。
ただ、実際に分析する際には回転日数の方が理解しやすいため、1日あたりの売上原価を分母に採用する方がおすすめです。
まずは仕入債務と売上原価の定義を確認しておきましょう⬇︎
項目名 | 掲載 財務諸表 |
概要 | 代表的な勘定科目 |
---|---|---|---|
仕入債務 | BS | 取引先から仕入れた 商品や原材料の中で まだ現金での支払いが 完了していない額 (取引先へのツケ) |
買掛金 支払手形 |
売上原価 | PL | 販売した商品の 製造や仕入れに かかった費用 |
売上原価 (材料費・労務費・経費など) |
要するに、仕入債務回転期間とは仕入債務と1日あたりの売上原価を比較し、未払いの代金が売上原価の何日分存在するかを測定する指標です。
特にBtoBの取引となれば商品やサービスを現金で一括購入することはまずありません。
買い手側の企業は『ちゃんと商品を買いました。後ほど現金で振り込みますよ』と約束して買掛金や支払手形を発行し、近い将来にお金を支払う際の証明として使うのが通例です。
もちろん、仕入債務回転期間は長い方が好ましいとされていますよ。
仕入債務 | 700万円 | 6,000万円 |
---|---|---|
1日あたり 売上原価 |
100万円 | 100万円 |
仕入債務 回転期間 |
7日 | 60日 |
つまり | 未払いの代金を 支払うのは 7日後 |
未払いの代金を 支払うのは 2ヶ月後 |
要するに仕入債務回転期間が長いほど手元からお金が出ていくのを後ろ倒しにできます。
回転期間が長くなるほど、商品販売による売上金が入ってくるまでの時間も短くなりますよね。結果的に資金不足による倒産リスクが低くなります。
一方で、売上債権回転期間や棚卸資産回転期間は短い方が好ましい指標であるため混同しないように注意しましょう。
業界によって各種回転期間の目安は大きく異なるため、分析する際は対象企業の過去データや同業他社の数字と比較するのが得策です。
仕入債務回転期間の目安は65.3日
- 仕入債務回転期間の目安は65.3日
日経225の企業データ(2019)を活用して仕入債務回転期間を計算したところ、平均値は65.3日となりました。
つまり、日本を代表する企業群は原材料等を仕入れてから約2ヶ月後に代金を支払っていることが分かりますね。
業界シェアや企業規模が大きくなるほど取引先との交渉力が強くなる傾向にあるため、中小企業で調査するともう少し短い期間が算出されるでしょう。
一方で、あなたの就職先や取引先の仕入債務回転期間はおよそ何日でしょうか?
次章のシミュレーターやEDINETを活用してチェックしてみましょう!
仕入債務や売上原価の値など、企業の財務情報を確認するなら一次情報のEDINETかバフェットコードがおすすめ。
ぜひ気になる企業の仕入債務回転期間を計算してみましょう!
仕入債務回転期間を長くする方法をわかりやすく解説
- 仕入債務を増やす
- 売上原価を減らす
仕入債務回転期間を長くする方法は仕入債務を増やす、もしくは売上原価を減らす方法が考えられます。
仕入債務に比べればコントロールが効きやすいのが特徴的です。
売上高を大きく毀損することなく原価の圧縮を図る。仕入れの効率化とも言い換えられるでしょう。
ただ、売上原価の値を一定以上に保ちたい棚卸資産回転期間とのトレードオフになるため、理想的には仕入債務の増加が望まれます。
具体的な施策としては、今まで現金で即座に払っていた、もしくは1週間以内など比較的すぐ現金を支払っていた取引を見直すなど、支払いを後ろ倒しにする努力が考えられます。
ただ、交渉力が弱い企業が仕入れ先への代金支払いを引き伸ばそうとした場合、しばしば業績不調のサインとして捉えられるもの。
具体的には「売上代金の回収が遅れている」「在庫が急激に増加している」などの疑いがかけられても仕方ありません。
よって、短期的かつ取引先の心証を損ねずに仕入債務回転期間を長期化するのはかなり難易度が高い交渉であると言えるでしょう。
業務実績の積み重ねや業界シェアの拡大など、外堀から埋めていくことで結果的にたどり着く結果であると考えておく方が好ましいかもしれません。
企業分析の際はぜひ時系列データを並べ、どこかの年で仕入債務回転期間が急激に変化していないかをチェックしておくのがおすすめです。
仕入債務回転期間が長い上場企業3社を紹介
日経225企業の仕入債務回転期間ランキングTOP3を発表します。
なおころが独自開発した財務分析エクセル【IRIS】の100点満点分析の結果と合わせてご覧ください。
仕入債務回転期間543日 ファミリーマート
ファミリーマート | |
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証券コード | 8028 |
仕入債務回転期間 | 543日 |
財務分析 | 52点 |
仕入債務回転期間312日 第一三共
第一三共 | |
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証券コード | 4568 |
仕入債務回転期間 | 312日 |
財務分析 | 55点 |
仕入債務回転期間231日 アステラス製薬
アステラス製薬 | |
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証券コード | 4503 |
仕入債務回転期間 | 231日 |
財務分析 | 60点 |
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仕入債務回転期間は未払金の支払スピードを測定する指標 | まとめ
仕入債務回転期間の特徴まとめ
- 仕入れた商品の代金を支払うまでの期間(日数)
- 仕入債務回転期間=仕入債務÷1日あたり売上原価
- 目安は65.3日(長い方が好ましい)
本ページでは(仕入れに関係する)未払い代金の支払いスピードを測定する財務指標仕入債務回転期間について解説しました。
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