本ページでは企業の本質的な収益力を測定する財務指標【ROIC】についてわかりやすく解説します。
計算式や目安、ROIC分解ツリー、ROEやROAと比較したROICのメリットなど企業分析者なら絶対に理解しておきたいポイントをコンパクトにお届けします。
この機会にROICをマスターしましょう!
ROIC(投下資本利益率)とは?意味と計算式を解説
ROIC 投下資本利益率 (%) |
|
---|---|
指標分類 | 収益性 |
意味 | 事業活動のために 投じた資本に対して どれだけ利益を 出せたかを測定する指標 |
計算式 | ROIC=NOPAT÷投下資本 |
目安 | 6.8% |
改善方法 | NOPATを増やす 投下資本を減らす |
算出に 必要な 財務諸表 |
BS:株主資本、有利子負債 |
PL:NOPAT(税引後営業利益) | |
CF:必要なし | |
英語名 | Return on Invested Capital |
【ROIC】とは、企業と債権者(銀行など)から調達したお金に対して、どれだけ効率的に利益をあげることができたかを測定する財務指標。
NOPAT(税引後営業利益)を投下資本で割ることにより計算できます。
まずはそれぞれの語句の定義を確認しておきましょう⬇︎
項目名 | 掲載 財務諸表 |
概要 | 代表的な勘定科目 |
---|---|---|---|
NOPAT | PL | 営業利益から 法人税を差し引いた値 |
なし (営業利益ー法人税額) |
投下資本 | BS | 企業が事業活動に 投じた資金であり、 有利子負債と 株主資本の合計額 |
なし (有利子負債+株主資本) |
要するに、ROICとは投下資本(株主と債権者から調達したお金)をどれだけ効率的に運用してNOPAT(税引後営業利益)を獲得したかを測定する指標です。
ROIC(投下資本利益率)の対応コストを解説
ROICの対応コストはWACC
- 投下資本 = 有利子負債+株主資本
- 有利子負債は債権者からの調達コスト
- 株主資本は株主からの調達コスト(期待利回り)
- WACCは加重平均資本コスト
ROICは株主と債権者(銀行など)の両方から調達した資金へのリターンを示しています(債権者へのリターンが「支払利息」、株主へのリターンが「純利益(配当)」に対応)。
調達コストの中に事業負債(買掛金など)が含まれていないのがROA(総資産利益率)との大きな違い。余分なノイズを除いた純粋な調達コスト(投下資本)が分母に据えられています。
また、ROICは単体の推移だけではなく、株主資本と有利子負債にかかる調達コストの加重平均であるWACC(加重平均資本コスト)と比較しての分析が重要です。
こちらは難易度の高い財務指標EVAスプレッド(ROICーWACC)の記事にて詳しく解説中。ROICとWACCが理解できた上級アナリストはぜひ合わせてご覧ください!
ROIC(投下資本利益率)ツリー分解を解説
ROICはNOPATと投下資本の2つの変数によって構成されていますが、徐々に紐解けば画像のように分解することができます。
そもそも営業利益は売上高から売上原価と販管費を差し引いた値。
それらを売上高との比率に直せば画像の式が完成です。原価率か販管費率、どちらかが低くなることで営業利益率が向上。
損益計算書の5つの利益が頭に入っている企業分析者なら、ROICの利益要因ツリーについては疑問が少ないでしょう。
投下資本回転率は、なぜ固定資産回転率と運転資本回転率に分解できるのか?
その答えは回転率の逆数である回転期間で考えるとあっさり理解できますよ。以下の画像をご覧ください。
仮に固定資産回転率か運転資本回転率を上げれば投下資本回転期間が短縮され、逆数である投下資本回転率が向上。結果的にROICが上昇します。
初見では難しいかもしれないため、何度か見返しつつ理解を深めましょう!
つまりROICを改善しようと試みる場合に考えられる選択肢は「原価率を下げる」「販管費率を下げる」そして「運転資本・固定資産の回転率を上げる」。
ROICをKPIとした場合、これら4つのどの変数を改善するかを考えるとさらに具体的な施策と優先順位が決まるでしょう。
経営判断にしっかりとした論理的説得力が加わること請け合いです!
ROIC(投下資本利益率)ツリーのエクセルテンプレート
なおころが独自開発した財務分析エクセル【IRIS】ならROICツリー分解をグラフで出力可能です。
こちらは有料版のみの機能となっていますが、無料版はいつでも誰でもワンクリックでダウンロードできるのでぜひ使ってみてください!
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ROIC(投下資本利益率)とROEとROAの違いを解説
定番の財務指標ROE(自己資本利益率)、ROA(総資産利益率)とROICの違いは以下の通りです。
ROIC | ROE | ROA | |
---|---|---|---|
定義 | NOPAT÷投下資本 | 当期純利益÷自己資本 | 事業利益÷総資産 |
対応 コスト |
WACC (株主+債権者) |
自己資本 (株主のみ) |
総資本 (株主+債権者+事業負債) |
弱点 | 概念がやや難解で 現場への導入が難しい |
財務レバレッジ により操作可能 |
対応コストに 事業負債まで含む |
ROICが 特に重視 される理由 |
小手先(負債の借入)で操作することが難しく、 株主と債権者(銀行など)からの調達コストに 過不足なく対応した企業の本質的な収益力を 測定できる指標だから。 |
つまり、ROEよりもROAよりも企業の本質的な収益力を捉えることができるのがROICの強みです。この機会にしっかり違いをマスターしておきましょう!
ROIC(投下資本利益率)の目安は6.8%
- ROICの目安は6.8%
日経225の企業データ(2019)を活用してROICを計算したところ、平均値は6.8%となりました。
あなたの就職先や取引先のROICは何%でしょうか?次章のシミュレーターやEDINETを活用してチェックしてみましょう!
あなたが気になる企業の数字を入力してみましょう!自動的にROICが計算されます。
「営業利益がこれぐらい増えたらROICはどれくらい増える?」また「有利子負債をゼロにしたらROICはどうなる?」など数字を変更してみると面白いですよ。
企業の財務情報を確認するなら一次情報のEDINETかバフェットコードがおすすめ。ぜひ気になる企業のROICを計算してみましょう!
ROIC(投下資本利益率)が高い上場企業3社を紹介
なおころが独自開発した財務分析エクセル【IRIS】の分析結果と合わせて、日経225企業のROICランキングTOP3を発表します。
ROIC28.0% アドバンテスト
アドバンテスト | |
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証券コード | 6857 |
ROIC | 28.0% |
財務分析 | 69点 |
ROIC27.5% 東京エレクトロン
東京エレクトロン | |
---|---|
証券コード | 8035 |
ROIC | 28.2% |
財務分析 | 72点 |
ROIC21.5% エムスリー
エムスリー | |
---|---|
証券コード | 2413 |
ROIC | 21.5% |
財務分析 | 56点 |
ROIC(投下資本利益率)導入企業事例を紹介
ROIC導入企業事例.1 オムロン株式会社
ROIC導入企業事例.2 ピジョン株式会社
ROIC(投下資本利益率)をさらに詳しく知るための書籍「ROIC経営」
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まだまだ日本社会へ浸透していないROICをこの一冊でさらに深く理解しましょう!
ROIC(投下資本利益率)は企業の本質的な収益力 | まとめ
ROICの特徴まとめ
- 投下資本に対する収益力を測定する指標
- ROIC=NOPAT÷投下資本
- 目安は6.8%(大きい方が好ましい)
本ページでは投下資本に対する企業の本質的な収益性を測定する財務指標【ROIC】について解説しました。
ROEやROAに代わる企業分析の新定番となるでしょう。
投資や就職と言った重要な意思決定の前にはぜひチェックしておきましょう!
疑問点などあればなおころのLINEにいつでもご連絡ください!
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