本ページでは企業の総合的な収益力が一目でわかる財務指標EVAスプレッドについてわかりやすく解説します。
EVAスプレッドの拡大こそが経営者の使命。計算式や目安となる数字、EVAスプレッドを広くする方法など、理解してくおくべきポイントをまとめてお届け!
EVAスプレッドとは?意味と計算式を解説
EVAスプレッド(%) |
|
---|---|
指標分類 | 収益性 |
意味 | 本質的な稼ぐ力(ROIC)と 資本調達コスト(WACC)の差分を 測定する指標 |
計算式 | EVAスプレッド=ROICーWACC |
目安 | 0.78% |
改善方法 | ROICを高くする WACCを低くする |
算出に 必要な 財務諸表 |
BS:有利子負債、株主資本、支払利息 |
PL:NOPAT(税引前営業利益) | |
CF:必要なし | |
英語名 | Economic Value Added Spread |
企業の総合的な収益力を評価する財務指標【EVAスプレッド】はROICからWACCの値を差し引くことにより算出できます。
まずはROICとWACCの定義を確認しておきましょう⬇︎
ROICとは事業活動に投じた資本から生み出した利益。対するWACCはその資本を調達するために支払うコストの加重平均です。
さらに詳しく知りたい方は各財務指標の解説ページをご覧ください!
本題のEVAスプレッドとは、生み出した利益と投下した資本の調達コストを比べた財務指標。
つまり「対象企業の稼ぐ力がコストを上回っているか?」ひいては「企業価値を高められているか?」を見極められる指標なのです。
EVA(経済付加価値)とは?企業の本質的な収益力の実額
- EVA=投下資本×(ROICーWACC)
- ROICーWACC=EVAスプレッド
EVAとは企業の本質的な収益力の実額です。
計算式は投下資本とEVAスプレッドの掛け算により算出されるため、EVAがプラス(ROIC>WACC)であれば、企業は調達コストを全て差し引いた状態で利益を生み出している(すべてのステークホルダーの期待を上回り企業価値を増大させている)ことを意味します。
パーセント表示ではなく実額で収益性を評価できるため、企業の現場に浸透させる際に実感を持ちやすいのが大きなメリットと言えるでしょう。
EVAが高い事業ほど企業の価値が上がり、多くのキャッシュを得られるため大切に育てたいですね。
日本を代表する大企業とベンチャー企業では投下資本額も桁違い。画一的なものさしを使ってEVAを評価するために誕生したのがEVAスプレッドです。
企業間で比較する際にはこちらを使うのが得策でしょう。どんな規模の企業であってもROICとWACCに投下資本額ほどの差異はないため簡単に比較ができますよ。
以上の理由を背景にEVAスプレッドが広く使われるようになりました!
EVAスプレッドの本質は付加価値の創出
ROICは企業の本質的な稼ぐ力。WACCは資金の出しての期待リターン。
よって両変数の差が大きくなればなるほど経済付加価値を産むことを意味します。
言い換えれば、EVAスプレッドの拡張こそが経営者の本懐。中長期的な推移を追うことで企業の好不調を見極めることができるでしょう!
EVAスプレッドの目安は0.78%
- EVAスプレッドの目安は0.78%
日経225の企業データ(2019)を活用してEVAスプレッドを計算したところ、平均値0.78%となりました。
日本を代表する企業群ではROICとWACCの差がほとんど存在していないことが分かりますね。
ただ、後半のEVAスプレッドBEST3の紹介では10%以上の有望銘柄がゴロゴロ。EVAスプレッドの拡張に悩む経営者はビジネスモデルを参考にしてみるのがおすすめです。
あなたが気になる企業のROICとWACCを入力してみましょう!自動的にEVAスプレッドが計算されます。
ROICとWACCの解説ページにはそれぞれのシミュレーターも設置済。必要に応じてご利用ください!
EVAスプレッドを広くする方法をわかりやすく解説
- ROICを高くする
- WACCを低くする
EVAスプレッドを広くするにはROICを高くするかWACCの値を低くする方法しかありません。
まず、ROIC(NOPAT÷投下資本)の最大化については投下資本を削減すると最終的にEVA額が小さくなるため、 NOPAT(税引後営業利益)の改善に注力するのが得策です。
つづいてはWACCの抑制について。
借入の少ない企業については有利子負債割合を底上げする(借入金を増やして投資に回す)ことで期待リターンの平均値を低下、合わせてWACCの低下が狙えます。
一方で、借入金が多く財務安全性が低い企業にとっては短期的な改善が難しいでしょう。まずはしっかりと利益を創出し、負債割合を低くするのが先決です。
また、ひとつ抽象度を上げた選択肢として「WACCを上回るROICを生み出せる事業にのみ投資していく」意思決定も重要でしょう。
複数の事業を俯瞰できる経営陣は時に「選択と集中」を迫られるかもしれません。
EVAスプレッドが広い上場企業3社を紹介
なおころが独自開発した財務分析エクセル【IRIS】の分析結果と合わせて、日経225企業のEVAスプレッドランキングTOP3を発表します。
EVAスプレッド19.1% アドバンテスト
アドバンテスト | |
---|---|
証券コード | 6857 |
EVAスプレッド | 19.1% |
財務分析 | 69点 |
EVAスプレッド18.7% 東京エレクトロン
東京エレクトロン | |
---|---|
証券コード | 8035 |
EVAスプレッド | 18.7% |
財務分析 | 72点 |
EVAスプレッド12.7% エムスリー
エムスリー | |
---|---|
証券コード | 2413 |
EVAスプレッド | 12.7% |
財務分析 | 56点 |
EVAスプレッド導入企業 | ピジョン
ベビー用品に強い国内企業ピジョン(7956)は毎回の決算で独自に開発したPVAツリーを公表しています。
EVAスプレッド(ROICーWACC)を向上させるための指標がブレイクダウンされ、分かりやすく整理されていることが伺えますね。
難解な指標だからと言って尻込みせず、現場業務に落とし込むことが企業価値の底上げにつながるでしょう。
興味がある方はピジョンの決算説明資料にも目を通してみるのがおすすめです!
EVAスプレッドをさらに詳しく知るための書籍
EVAスプレッドをもっと詳しく知りたい方には『新・企業価値評価 』がおすすめです。
特にEVAスプレッドを広くする4つの方法について非常に詳しく解説されており、企業の舵取りを担う経営者やCFOは必読の一冊でしょう。
「企業価値を高めるために必要な知識をまとめてマスターしたい!」そんなあなたにぴったりの一冊です!
EVAスプレッドの拡大は経営者の使命 | まとめ
EVAスプレッドの特徴まとめ
- 企業の総合的な収益力を測定
- EVAスプレッド=ROICーWACC
- 目安は0.78%(高い方が好ましい)
- スプレッドの拡大は経営者の使命
本ページでは企業の総合的な収益力を測定する財務指標EVAスプレッドについて解説しました。
計算にはROICとWACCの難関指標の理解が欠かせませんが、企業の収益性や企業価値を測定する際にこれ以上頼りになる指標はありません。
投資や就職と言った重要な意思決定の前にはぜひチェックしておきましょう!
疑問点などあればなおころのLINEにいつでもご連絡ください!
https://availability89.com/financial-indicators/