令和元年6月3日。
金融庁から公表された「高齢社会における資産形成・管理」により老後資金が年金だけでは2,000万円足りない問題は日本国民の悩みのタネとなりました。
- 私は老後までにいくら準備すればいいの?
- 今からなら毎月いくら貯金すれば大丈夫?
- 投資で準備するなら何%くらいの利回りが必要?
と言った疑問が頭をよぎった方も多いでしょう。ただ、将来のお金が不安になったとは言え「自分は老後までにいくら準備すべきか?」キチンと把握せずに問題を先送りにしている方も多いのではないでしょうか?
それもそのはず。
老後資金を綿密に計算するには退職後の支出額やもらえる年金の見込み額、または現時点の預貯金や負債額など必要な数字が多くてめんどうくさいことこの上ありません。
そんな悩みを解決すべく老後資金を簡単に計算できるシミュレーションツール(エクセル)を開発しました(無料でダウンロード可能)。
このエクセルを使うことで以下のことが簡単に分かります。
- あなたは老後までにいくら準備すればいいのか
- 今から毎月いくら貯金すればいいのか
- 投資で準備するなら年間何%くらいの利回りが必要か
限りなくシンプルに作成したため、エクセルを使ったことがある方は操作に迷うこともありません。
将来のために準備しておきたい資金額を把握し、計画的に貯蓄・運用をスタートするきっかけにしましょう!
\あなたは老後にいくら必要?/
無料で使えます!
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老後資金シミュレーションエクセルの全体像と使い方を解説
老後資金シミュレーションエクセルの全体像
なおころが自作した老後資金シミュレーションツールの全体像は画像の通り。1シートの中で情報が完結するシンプルなつくりです。
シートの中にあるのは合計4つのエリア。次章で各エリアの情報を使い方と合わせて解説していきます!
1. 目的と使い方エリア
エクセルの最上部にあるのはツールの目的と使い方エリア。初めてシミュレーションする際は一読をお願いいたします。簡単にまとめると以下の通り。
- 目的:老後資金に関する数字のシミュレーション
- 使い方:2つの質問に答える (必要に応じてさらに数字を調整する)
使い方についての詳細は後述しますが、取り急ぎのシミュレーション結果は2つの質問に答えるだけで算出されます。ぜひ試してみてください!
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2. シミュレーション結果出力エリア
回答必須の2つの質問と答えの入力欄、あわせてシミュレーション結果が出力されるエリアです。本エクセルにおいて最も重要なエリアと言えるでしょう。
回答必須の2つの質問は以下の通り。
Q1 あなたの今の年齢は?
Q2 あなたが投資に回せそうなお金は月額いくら?
取り急ぎこれら2つの質問に答えるだけで
- あなたが目標額達成に必要な年間利回り(%)
- 仮に貯金だけで目標達成額を貯める場合に必要な毎月の貯金額(万円)
の2つが自動で計算されます。
もちろん年齢や投資に回せる金額を変更すれば出力される結果も変わりますよ。自由に数字を調整して「毎月の投資額がこれくらいなら年間でこれくらいの利回りを目指せばいいのか」と目安にして下さい。
仮にQ2の答え(毎月の見込み投資額)が、(目標達成額を貯金だけで貯める場合の)毎月の貯金額を上回った場合、年間利回りはマイナスの値が出力されます。
具体例は以下の通り。
画像の例ではQ2の答え(6万円) > 毎月の必要貯金額(4.9万円)となっているためマイナスの利回り(-1.2%)が出力されました。
これは「30歳から毎月6万円投資できるなら利回りがマイナスでも目標額(画像の例なら65歳までに2,000万円)が達成される」ことを意味しています。
つまり、上記の様なパターンなら投資に手を出さずとも貯金だけしておけば老後資金は問題ないとも言えるでしょう。若い時から長期でお金を貯めることができればリスクの高い投資に手を出す必要がなくなることを示唆しています。
もちろん将来的に必要となる老後資金が上昇することを見込み、稼ぐ力が旺盛な年代のうちに投資する経験を積むことも重要ですが、なかには貯金だけでOKな家庭もあることを覚えておいて下さい。
3. 項目カスタマイズエリア
様々な項目を自分なりの数字にカスタマイズできるエリアです。
例えばデフォルトでは「65歳までに2,000万円を貯める」設定に調整されていますが、少し厳しく見積もって「70歳までに3,000万円貯めるためには?」などのシミュレーションも可能です。
具体的なカスタマイズ項目は以下の通り。
エクセル内の水色背景のセルがカスタマイズ対象となります。
例えば毎月の支出額が大きく、もらえる年金見込額が小さくなるほど老後までに準備しておきたい額も増加。合わせてシミュレーション結果で出力される目標利回りの数字も大きくなる、と言ったイメージです。
あなたの経済状況や未来予想図に合わせて数字を調整してみましょう!
あなたの退職予定の年齢は?デフォルト値65歳
まず考えておきたいのはあなたの退職予定の年齢です。
公務員を例にとれば2019年時点では60歳が定年と規定されていますが、政府は65歳への引き上げを検討しているばかりか、定年年齢を70歳と仮定した場合の経済効果に関する議論も進んでいます。
デフォルト値では65歳と設定していますが、定年が近づくにつれて調整が必要となる項目でしょう。
何歳までお金があると安心?デフォルト値92歳
厚生労働省の発表によると、2018年における日本人の平均寿命は女性が87歳、男性で81歳。ともに過去最高を更新しました。
医療技術の発達により、がんなどの死亡率が低下したことや国民の健康意識の高まりが主要因とされています。
また、内閣府の推計による2065年時点の女性の平均寿命は91.35歳。よってエクセル上のデフォルト値は92歳と設定していますが、こちらも必要に応じて調整をお忘れなく!
老後の毎月の支出額は?デフォルト値26万円
あなたは老後の生活費がひと月あたり何万円ほど必要でしょうか?
総務省によって2018年に調査、2019年に公表された資料によると
- 世帯主が65歳以上
- 世帯主が無職
- 2人以上の世帯
における毎月の支出額の単純平均は26万円でした。食費や光熱費、通信費など押さえておきたい項目をエクセル上に用意しています。自由に数字を調整しつつ、足りない項目は自分で追加してみましょう。
ただ、統計データは家を保有している家庭を対象にしているため、住居費が毎月1.5万円とかなり低く抑えられています。賃貸の場合は、住居費欄に家賃の見込額を入力する必要がありますね(2018年の総務省調査によれば持ち家比率の全国平均は約60%で減少傾向)。
当然、老後までに準備しておきたいお金はかなり増えることになるでしょう…
老後にもらえる年金見込額は?デフォルト値19万円
あなたが老後にもらえる年金は毎月あたり何万円でしょうか?
こちらも毎月の支出額同様、総務省による2018年調査の結果を確認、計算しました。
- 世帯主が65歳以上
- 世帯主が無職
- 2人以上の世帯
上記の条件で平均をとると毎月もらえる年金額は約19万円。支出額を抑えればなんとか生活できそうな数字ですね。
ただ、あなたが年金をもらう年齢になった時、同様に20万円弱の年金が受け取れるのでしょうか?
気になった方は日本年金機構の「ねんきんネット」を活用してみましょう。インターネット上であなたの将来の年金見込額を確認することが可能です!
現時点の貯金や負債額は?デフォルト値102万円
あなたの現時点の貯金や負債額はいくらでしょうか?
統計局による調査資料(2018年に調査、2019年に公表)を使って現役世代の平均を確認・計算してみました。30〜59歳の2人以上世帯における平均は以下の通りです。
- 貯金総額:699万円
- 投資信託などの資産:442万円
- 住宅・自動車ローン:1,039万円
よって純粋な貯蓄額(資産から負債を差し引いた値)は102万円となりました。それぞれの値がデフォルト値としてエクセル上に入力されています。
貯蓄や負債額は各家庭によってかなり差が出る項目であるため、最終的に目指す投資利回りへの影響も大きいことが考えられます。あなたの経済状況に合わせて数字を調整してみましょう!
4. 引用文献エリア
もろもろの平均値を算出するにあたって使用した引用文献をまとめたエリアです。
主だった文献は上記で紹介した統計局による家計調査。「自分でも平均値を計算してみたい」「一次資料を確認しておきたい」なんて時にご利用ください。
老後資金シミュレーションエクセルの応用
本エクセルではシンプルさが損なわれてしまうことを懸念して、例えば以下の項目については考慮していません(デフォルトの状態では)。
- 今後の物価上昇率
- 退職金の見込額
- 毎月の見込貯金額
ただ、老後資金を検討する上でどれも必要な数字であることは違いありません。
この問題についてはエクセルの「老後までに追加で用意しておきたいお金は?」の右隣の黄色背景セル(D39セル)を編集することで対応していただきたいです。
デフォルト値ではD39は「2,050」万円となっていますが、仮に「物価が上昇したため老後までに2,000万円→3,000万円貯めたい」となれば該当セルに3000を打ち込む。
仮に「退職金が1,000万円もらえることが確定した」となればD39のセルの値(デフォルトなら2,050万円)から1,000をマイナスした値(1,050)を入力してもらう、といったイメージです。
老後資金シミュレーションの早見表
65歳までに2,000万円を貯めることを前提にシミュレーションした早見表を掲載します。
実際に計算するのが難しい場面などの目安に使ってください。
30歳から5歳刻み、月3万円・4万円・5万円を投資する場合の目標年間利回りは以下の通りです。
老後資金シミュレーションの早見表 | ||
今の年齢 | 毎月の投資額 | 必要な年間利回り |
30歳 | 3万円 | 2.6% |
35歳 | 3.9% | |
40歳 | 5.9% | |
45歳 | 9.1% | |
50歳 | 15.1% | |
55歳 | 28.6% | |
60歳 | 77.3% |
老後資金シミュレーションの早見表 | ||
今の年齢 | 毎月の投資額 | 必要な年間利回り |
30歳 | 4万円 | 1.1% |
35歳 | 2.2% | |
40歳 | 4.0% | |
45歳 | 6.8% | |
50歳 | 12.2% | |
55歳 | 24.4% | |
60歳 | 69.2% |
老後資金シミュレーションの早見表 | ||
今の年齢 | 毎月の投資額 | 必要な年間利回り |
30歳 | 5万円 | -0.1% |
35歳 | 0.8% | |
40歳 | 2.4% | |
45歳 | 4.9% | |
50歳 | 9.8% | |
55歳 | 21.1% | |
60歳 | 62.9% |
どのパターンでも50歳あたりから必要な年間利回りが急上昇していることが分かりますね。
投資は長期戦になるほど(若い間にスタートして長期で運用するほど)有利になることがよく分かります。
老後資金シミュレーションエクセルまとめ
老後資金シミュレーションエクセルで分かること
- あなたは老後までにいくら準備すればいいのか
- 今から毎月いくら貯金すればいいのか
- 投資で準備するなら年間何%くらいの利回りが必要か
「老後資金が年金だけでは足りない」といったニュースを受けて反射的に投資や貯金をスタートしても不安解消にはつながりません。
「老後までに準備しておくべきお金はいくらか」「投資なら年間何%を目指すべきか」をしっかり把握するなど計画的に進めましょう。
エクセルの応用で記載した通り、本エクセルは将来の物価変動や突然の出費などに関して柔軟な対応が可能です。ふとした時に思い返して使って何度もシミュレーションしてみてくださいね。
\あなたは老後にいくら必要?/
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「老後のお金を準備する際に個々人がカスタマイズできるシミュレーションツールがあればいいなぁ」と考えたのが開発のきっかけでした。
例えば楽天証券の積立かんたんシミュレーションも非常に便利ではあるですが、そもそもの目標積立額の算出の仕方が分からないなど痒い所に手が届きませんでした(目標とすべき利回りの計算結果は楽天のシミュレーターと合致する様エクセルを組んでいます)。
ここまで読んでいただいたあなたの、老後資金に関する不安解消の一助となれば嬉しいです。家族でひとつのエクセルを囲みながら将来の話をするなんていかがでしょうか?
【注意事項】
- 本エクセルでのシミュレーション結果はあくまで仮定であり、将来の投資成果を約束するものでは当然ありません
- 目標達成額に必要な利回りは期首払・月複利・非課税で計算されています
- 各種手数料や税金などは考慮していません
- エクセル上で操作できるセルを一部制限しています
【さいごに】
本シミュレーションエクセルの作成にあたって元銀行マンのさかえるさん(@sakaeruman)に内容(主に使用感)に関して大変有意義なコメントをいただきました。
抜け落ちていた視点の補完や使いやすさの向上など、コメントによる本エクセルの大きなアップデートを実感しています。お忙しい中本当にありがとうございました!
以上です!今回紹介したエクセルは無料でダウンロードできますのでぜひ使ってみてください!Twitterで使ってみた感想などいただけると嬉しいです!
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